制作　13.11.02
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31. Kenko NEW KDS マウントⅡの軽量化改造とガタ対策
Kenko NEW KDS マウントⅡ　
推奨改造使用例

標準状態からアームを短く小型化し、約300ｇ軽量化を行いました。
１．NEW KDS マウントIIの特徴と軽量化改造仕様

天体用経緯台の NEW KDS マウントをデジスコ向きにジンバル改造をして以来約６年、カモメ観察とデジスコ撮影で重宝に愛用しています。
ＫＤＳマウントの魅力として、バランスの優れたジンバル構造にフリクション調整で動きの硬さ具合を簡単に調整出来、合わせて堤防に並んでいるカモメを微動つまみで順番に観察でき、フレーミングも簡単に操作できます。
途中メーカーからジンバル化した NEW KDS マウントⅡが発売され、旧製品のような面倒な改造を行わなくても新タイプを購入すれば改造無しでジンバル型雲台の操作感が得られるようになりました。

新タイプの課題としてアームが大きく延長されて、大きさが大きく重たくなり機動性や剛性が気になります。
解決策としてマウントを天体用のアリガタマウントから小型で操作性の良いアルカスイス規格マウントに変更し、大きなアームを適度な長さに変更し、軽量化と携帯性と剛性を向上させる方法を紹介します。

また、調整不良や経之時劣化で各部にガタが発生しているとスムーズな操作感が得られませんので、今までの経験からガタの調整方法や対策もまとめて紹介します。

尚、改造・調整は分解加工を伴いますので、破損の可能性も有り自己責任にて行って下さい。
写真１　KDSマウントⅡ 標準 写真２ 　推奨改造 写真３　 かんたん改造
項　　　目 オリジナル　改造前 推 奨 改 造 かんたん　改造
総　重　量 １．２Kg ９００ｇ　（－３００ｇ） ９００ｇ　（－３００ｇ）
マウント部 アリミゾマウント　２００ｇ アルカスイス　１００ｇ　（－１００ｇ） アルカスイス　１００ｇ　（－１００ｇ）
アームスペーサー　縦 Ｌ４９ｍｍ　１５０ｇ Ｌ２７ｍｍ　６０ｇ　（－９０ｇ） Ｌ３５ｍｍ　１００ｇ　（－５０ｇ）
アームスペーサー　横 Ｌ３５ｍｍ　１００ｇ Ｌ２０ｍｍ　４０ｇ　（－６０ｇ） 未使用　（－１００ｇ）
ボルト類 基　準 （－５０ｇ） （－５０ｇ）
① 推奨改造
アルカスイスマウントに変更し、アームの長さは縦用スペーサーを２分割で切断し軽量化加工を行い、全体をバランス良く小型化し３００ｇの軽量化とやや剛性アップを行っています。
欠点として高さが２２mm低くなり、仰角の可動範囲が標準より狭くます。
② かんたん改造
アルカスイスマウントに変更し、アームは横側のスペーサーを取外し外した短いスペーサーを縦側に移動し、剛性アップと３００ｇの軽量化を行っています。
欠点として横方向のアームが短くなるため三脚とのセンターのズレ量が大きくなります。
２．軽量化改造の方法
2-1 アリミゾ型からアルカスイス規格マウントに変更　
購入時のマウントは、重量のある天体用に広く使われているアリミゾ型で２００ｇと重く、写真用の小型で操作性の良いアルカスイス規格マウントに変更します。（巾５０mmm以上を推奨）

①アリミゾマウントの取り外しは、センターキャップを剥がしてＭ８キャップボルトを取外します。接続部は接着されており、簡単に外れない場合はプラハンマーで叩くと外れます。

②アルカスイスマウントには種類が多く、固定ボルトは通常3/8、1/4、Ｍ６などが使用されていますので、下部ユニットに使われている三脚用の1/4インチを使用するため、上部ユニットと下部ユニットを入れ替え1/4インチ×10～15mmの六角穴付皿ボルトで新しいマウントを取り付けます。
また、三脚が1/4インチで上下のユニットの入れ替えたくない場合は、③の改造を行い写真５の1/4インチアダプターを使用してもマウントの取付が可能です。

③入れ替えた下部ユニットのＭ８ボルト穴を三脚に合わせて3/8インチにタップ加工します。
3/8インチタップ加工の下穴はＭ８になりますが、フリクション調整ボルトと共通になりますのでＭ８キリの深さには注意が必要です。
写真４　アリミゾからアルカスイスに変更 写真５　3/8→1/4インチ変換アダプターの使用例
2-2 アームスペーサーのサイズ変更と軽量化
縦横のアームが長く剛性が心配されますのでスペーサーの長さを短くして、剛性アップと軽量化を行います。
アームの長さを短くすると、横側はスコープのセンターからずれる量が大きくなりますが、横のスペーサーを外しても実際の違和感はさほど気になりませんでした。
縦側は短くなると仰角が少なくなる欠点がありますので、機材と使用目的に合わせて長さを決めるといいと思います。

今回の改造では大きさと剛性を考慮し、縦側のスペーサー４９mmを横用２０mm、縦用２７mmにカットしています。
取付ボルトＭ６の長さはスペーサーの長さ＋８mmが目安になりす。

また、かんたん改造では横アームのスペーサーを取り除いたセンターズレさえ気にしなければ、推奨改造と同様の軽量化と剛性アップの効果も得られます。
写真６　縦横アームスペーサーの軽量加工
軽量化には写真の様にスペーサーに穴あけ加工を行いました。
この穴あけ加工でアルミ素材の約３０％の軽量化の効果があり、縦横の長さ変更を合わせ変更前の２５０ｇが１００ｇにまで軽量化できました。
３．ガタ対策と調整方法
ＫＤＳマウントに不満を感じる事の多くが各部のガタによりスムーズな動きができずにロックの甘さを感じる点だと思います。
ガタの感じ方には個人差がありますが、旧製品は出荷時から多くのガタがあり、新タイプでは出荷時の調整がいくらか良くなってきたと思いますが、適切な調整がＫＤＳマウントの使用感を左右し、満足度は雲泥の差があると思います。
調整や対策にはガタの発生源を的確に判断し、調整と対策を行う事だと思います。
これまでの経験から各部の調整や対策方法を紹介します。
3-1 フリクション調整つまみを強くロックしても可動アームにガタがある場合
（必要時のみ、分解にリスクがあり慎重に見極めが必要です）　
この症状は結構やっかいな症状で、微動ギヤーと可動アーム本体とのギャップで発生するガタで、真鍮製の微動ギヤーとアームを締め付けている皿ビス４本のギャップ調整になります。
真鍮製微動ギヤーの裏面に通常スペーサーが２枚入っていますがギャップが大きいと可動アームのガタとなります。
写真７　微動ギヤー裏面のスペーサー

ガタがある場合のみの対策としてスペーサーを１まいにするか、取り外す事でガタを取り除く事が出来ます。
ギャップが狭くなりすぎると微動ギヤーがフリクションの強さに関係なく重くなります。
3-2 フリクション調整部のガタ対策（全数）
フリクション調整の皿ビス４本が緩むとアームを動かしたときに僅かなガタが４本の調整ネジの緩みに応じて経時劣化的に発生します。
調整ビスの緩みが無くてもガタが発生する場合、フリクション軸の固定板に多分全数にガタがありますのでフリクション軸のガタ防止と調整ネジの緩み対策として、次の対策を行います。また、本対策はフィールドスコープを使用しカメラの着脱をしてもずれない程度のフリクションを想定しており、天体用の重量物を強いフリクションで使用する場合は①の対策は適さないかもしれません。

①フリクションを強めていくと調整ビスにかかる与圧が減り次第に調整ネジが緩んでしまいます。固定板の裏側にあるスペーサーワッシャーに変えてＯリング（内径6.8mm、太さ1.9mm）を挿入します。フリクションを強めていくと調整ビスにＯリングが潰れて接触する事で、調整ネジの緩み防止の効果が得られます。
Ｏリングを追加する際には、調整ビスの取付前にＭ５ボルトをガイド代わりにセットしてから調整ビスを取り付けるとＯリングが変形やずれずに取付けできます。
Ｏリングは消耗品として使用量に応じて定期交換が必要と思えます。

②調整ネジ取付板の油分を洗浄し、外周にテフロンテープ（厚さ0.13mm）や滑りやすい薄いフイルムを張りフリクション軸のガタを取り除きます。写真９

③更にフリクションの動きをスムーズにするために、通常調整つまみは調整板の中央部のみで本体と接しており、外周の金属と接していません。
調整つまみの裏面に写真10のシリコングリスを塗ったＯリングG40（内径39.4mm、太さ3.1mm）を追加する事で、つまみを外周にも接触させて接触面を分散させ、つまみからのガタを取り去り、滑らかなフリクションを実現します。
写真８　ガタ発生箇所 写真９　フリクション調整板 写真10　フリクション調整つまみ
写真11　使用するＯリング 写真12　テフロンテープ 写真13　特殊工具
3-3 微動ウオームギヤー部の調整（必要時のみ）
微動ギヤーとウオームギヤーのギャップが大きくなったり、微動ノブの固定軸に遊びが大きくなるとアームを動かした時にカタカタと細かいガタが発生します。

①微動ノブ軸の確認・調整方法は、強いフリクションの状態でスコープを動かすか微動ノブ軸を前後に押して写真14の赤←→部にガタがないか確認します。
ガタがある場合、ノブの逆側をスパナで抑えて必ず微動ノブの固定ビスを外してから、スパナで抑えたまま微動ノブを廻して適正な遊びになるようにノブを廻して調整します。微動ノブの取付ビスで固定して再度ガタがなく微動ノブがスムーズに回転できるか確認します。

② 3-2のフリクション調整・対策と①の調整を行っても細かいガタがある場合、ウオームギヤーのギャップ調整を行います。
調整には固定ボルトには写真13の特殊な3.5mmＬレンチと調整用に1.5mmＬレンチを使用します。
先ず調整ボルトと固定ボルトをゆるめギャップを広げ、写真14青→の左右の平行を確認しながら、徐々に調整用Ｍ３ホーローセットを締め込み、微動ノブの回転でやや重みを感じる位置で固定ボルトを固定します。
ギャップが少なすぎると微動ノブの回転時にひっかかりのような抵抗を感じます。
写真14　微動ウオームギヤーのｷﾞｬｯﾌﾟ調整

赤←→部にガタがないか確認します。

調整を行う場合は、調整のホーローセットを緩めて、青→の平行を確認しながら調整しますが、固定ボルトの締め具合であたり具合が変化しますので細かい調整が必要です。

４．　まとめ

フィールドスコープに適した軽量化とガタ対策でスムーズな操作を実現できると思いますが、私が理想とする使用方法は、特に遠距離の観察で微動ノブを使って鳥を探し、写真に撮っておきたい個体を見つけ、即座にカメラをセットしてもフレームがずれない程度の硬さを理想としています。
特に堤防に並んでいるカモメを観察している時には気になる個体を見つけると角度表示をセットして位置を記憶出来るので、別の個体を見ていてもすぐに元の位置に戻せる点は大変観察に適した経緯台だと思います。
過去の改造実績 19. 従来のＫＤＳジンバル風（Ｌ型アーム）
21. ＫＤＳマウントの簡単ジンバル改造２
25. 自由雲台を使った軽量ボールヘッドジンバル
26. ケンコーＫＤＳマウントの小型ジンバル改造
このページに掲載した調整や改造は、個人の工作レベルに左右されやすく、わかりやすく解説をしているつもりですが、何かのミスで部品の破損やかえってガタを増やす結果にも繋がりますので、調整・改造は自己責任で行って下さい。

また、ご質問やリスクを侵して調整・改造をされた場合、結果や感想をメールでお知らせ頂ければ幸いです。