制作 13.09.26

30. Canon Power Shot S120 のデジスコレポート 追加 13.10.17
各写真をクリックすると拡大します。
1.PowerShot S120 の特徴

13年9月に PowerShot S120 が昨シーズン使用していたS110の後継機として発売されました。
新しいS120は、S110で気に入っていたタッチAFは健在で、新しいF1.8レンズ、DEGIC6の新映像エンジン、新センサーに更新され、ダイナミックレンジが拡大され階調特性や感度特性が向上しています。
操作面ではAFスピードの向上、連写スピードが格段に早くなりストレスのないデジスコ機として期待できます。
詳しい仕様はメーカーサイトを参照下さい。

S120 に制作したアダプターと防振シーソーレリーズを装着
スコープ TSN-774 に S120 を接続
2.接続アダプターの制作
接続アダプターはコントロールリングを固定して取り付ける方式になっており、本アダプターの使用でコントロールリングを使用する機能は使用できなくなります。
利点としてレンズの光軸上に取付けるため光軸センターが出しやすく、軽量でシンプルな構造となります。
欠点としてコントローラーリングが使用出来なくなり、工作に当たっては旋盤加工などを含みますので工作の経験を要します。
@ コントローラーリングの固定

コントローラーリングの固定は単純で、コントローラーリングのカメラ側に輪ゴムを伸ばしながら4回位巻き付けるだけです。

マウント上部にカメラと隙間が出来るため輪ゴムの上部をマジックなどで黒く塗っておくと仕上がり時に輪ゴムが目立たなくなります。

写真1 リング固定の輪ゴムの巻き方
A 接続アダプターの材料  アダプター本体にはエンビの配管材料のDV継手清掃口50写真2の↓部分を使用しました。アイピース側にはTA−W1を使用します。
写真2 DV継手清掃口50 写真3 TA−W1アダプター
B 接続アダプターの加工  

3-1 DV継手とW1を接続するためにW1の外径に合わせて旋盤で内側を削ります。

3-2 DV継手のカメラ側をコントロールリングの外径に合わせ旋盤で内側を削ります。

3-3 DV継ぎ手の長さは調整範囲がありますが、アイピースとの接続クリアランスにより決めますが、参考ですが今回短めの22mmで制作しました。

3-4 DV継ぎ手のカメラ側の輪ゴムに当たる部分を段付きで旋盤で削ります。

3-5 W1のカメラ側がレンズと干渉しないように旋盤で切り落とします。
   加工の状態は下の写真を参照下さい。

3-6 固定には上下左右4ヶ所にM2ホーローセットで固定するため、両側にM2タップ加工します。

写真4 アダプター(カメラ側) 写真5 アダプター(アイピース側) 写真6 アダプター仮組立1
写真7 アダプター仮組立2 写真8 アダプター部完成 写真9 アダプター光軸調整
C 接続アダプターの調整  

4-1 制作したアダプターをカメラにしっかり取付けホーローセットで固定し、レンズの干渉に注意しながらTA-W1にTA-3.4.5等のアダプターを接続し、カメラのズーム位置がレンズの長さが最短の位置でアイピース側に接続します。

4-2 カメラのヒストグラム表示をONにして、スコープをフラットな面に向けヒストグラムの山が最も細くなる位置を最短クリアランスとし、DV継手とW1の長さを調整します。
注意:最短クリアランスの調整時はアダプターP2のような調整機能のあるアダプターの場合は最短距離になる位置で固定してからクリアランス調整を開始します。
また、撮影時のズーム変更の度にアイピース側でクリアランス調整を行わない場合は、推奨できませんが使用頻度の高いズーム位置で同様にクリアランス調整を行います。

4-3 クリアランスが決まったら光軸調整ですが、私は写真9のピンホール式の光軸調整ツールを使用し、ズーム位置を望遠側で撮影画面中央になるようにW1の傾きを微調整し、ホーローセットで固定します。
調整ツールが無い場合、アイピースに接続した状態で画面を見ながら四隅のケラレが均等になるように微調整し固定します。
また、広角側で光軸が画面の中央に来ていない場合は、カメラ側の取付を確認して下さい。 

3.防振シーソーレリーズの製作
  
下の写真の様に防振シーソーレリーズを製作します。
製作の詳細は Y29 防振シーソーレリーズの製作 を参照下さい。
4.写真特性

4-1 コントラスト、階調特性

センサーと画像エンジンが新しくなった事でS110と比べ、S120ではノーマルの状態でも暗部の再現性が向上しています。(写真10と写真14の比較)
それでも晴天時にはハイライト側のトビとシャドウ側の潰れが発生する状況があります。
カメラ設定でコントラストの補正はカスタム補正の中にあるコントラストにて行い、階調補正はDレンジ補正と暗部補正があります。
S120では階調補正も向上しており、AUTOに設定しておけばかなりの場面で綺麗に自動補正しています。
晴天時に柔らかめに仕上げるには、更にコントラスト補正を−1程度に設定すると良いかと感じます。

写真10 階調補正:OFF コントラスト:OFF 写真11 階調補正:OFF コントラスト:−2 写真14 S110 階調:OFF コントラスト:OFF
写真12 階調補正:AUTO コントラスト:OFF 写真13 階調補正:AUTO コントラスト:−2 写真15 S110 階調:AUTO コントラスト:OFF

4-2 感度特性
  
S120ではセンサーと画像エンジンの更新で感度特性も向上しています。
従来のS110では画質を考えたらISO400程と感じていましたが、新たなS120ではマゼンタノイズの発生も抑えられ、解像感の劣化も少なくISO1600位までは実用出来るようになったと感じます。

写真16 S120 ISO:80 写真17 S120 ISO:1600 写真18 S120 ISO:3200
写真19 S110 ISO:80 写真20 S110 ISO:1600 写真21 S110 ISO:3200

4-2 ズーム特性
  
S120ではレンズもF1.8の新タイプに更新されて全長も2mmほど長くなlり、デジスコ的にはレンズが大きくなるとケラレが心配となりすが、ほぼケラレ具合は同等でした。

写真22 ワイド端 5.2mm(720mm) 写真23 実用最短 7.6mm(1050mm) 写真24 望遠端 26mm(3600mm)
写真25 S120 ケラレアリ 6.8mm 写真26 S110 ケラレアリ 6.7mm
ズームテストの機材は

TSN−774
TE−17W(30倍

S110とS120では、ケラレ具合はほぼ同等です。

ケラレと照度ムラの状況
5倍ズームのためズームと絞り変化によりケラレと照度ムラが発生しますので、その都度適切なアイピースとのクリアランス調整(約8mm)が必要になります。特に@のクリアランスを中間で固定して撮影する場合、望遠側の照度ムラが目立ちます。
@ クリアランスを中間で固定した場合
A 各ズーム位置でクリアランス調整を行なった場合
ワイド端
クリアランス補正: +5.2mm
レンズ操出量最短
クリアランス : 基準
中 間
クリアランス補正: +0.9mm
望遠端
クリアランス補正: +7.9mm
写真27 28〜33 解像度テスト(ズーム中間、全画面)

約30m先の電柱を3機種( S120、S110、P6000 )で、各々ズーム中間と望遠端で撮影し、原画をピクセル等倍でトリミングしました。

3機種共まずまずの解像感で比較は難しいですが、複数のシーンで比較した結果、S120がやや解像感が良く感じられます。

写真28 S120 中間(ピクセル等倍) 写真29 S110 中間(ピクセル等倍) 写真30 P6000 中間(ピクセル等倍)
写真31 S120 望遠端(ピクセル等倍) 写真32 S110 望遠端(ピクセル等倍) 写真33 P6000 望遠端(ピクセル等倍)

5. サンプル写真 

ハクセキレイ  相模原市

TSN-774+TE-17Wを使用しました。体色のグレーの階調とほんのり黄色い顔がかわいらしくテスト撮影にしては満足な感じです。

階調補正:AUTO コントラスト:−1

Y130929-774-S120-00392
ノビタキ  相模原市

TSN-774+TE-17Wを使用しました。
移動途中の秋ノビが草むらで食事をしていました。。

階調補正:AUTO コントラスト:−1

f5.0 1/125sec ISO400 22.5mm

MP4 FHD動画 30秒(126M)
No.131017-774-S120-03194
セグロカモメ 成鳥夏羽

STM80-HD+25-50倍を使用しました。
夏羽の白い体色と秋晴れの青空が綺麗です。

階調補正:AUTO コントラスト:−1

f8 1/400sec -1/3 ISO80 17.4mm

No.131012-80HD-S120-01801
セグロカモメ 幼羽

漁網の様な物が口に絡まっています。外れてほしいもので、強風でブレはありますが外そうとしている姿をFHD動画にしてみました。

階調補正:AUTO コントラスト:−1

f8 1/125sec ISO80 23.1mm

MP4 FHD動画 30秒(126M)
No.131012-80HD-S120-01824
その他サンプルや動画のテストはフィールドレポート 13.10.20 以降を参照下さい。

6. まとめ

前モデルのS110はタッチAFが気に入っで使っていましたが、階調のコントロールが難しく、白トビに注意しながら使用していました。
新しいS120は、一番気にしていた階調コントロールが DEGIC6で大幅に改善され、それだけでも満足してしまいます。

写真特性については階調コントロールのDレンジ補正と暗部補正が AUTO の設定で、かなり良い補正をしてくれるようになり、光線の状態でコントラスト補正を0〜−2に設定しておけば、白いカモメの撮影でも暗部の潰れや白トビを少ない露出補正ですみそうです。
更に感度特性は高感度でもノイズの発生が少なく、ISO1600 でもかなり綺麗に補正してくれるようになり、夕方の撮影や翼を止めたい高速シャッターにしたい時には役立ちます。
また新しくなったレンズはガタも少なくなり、解像感もズーム全域で高く、デジスコで発生する倍率色収差も少なく、DEGIC6とで質感が高まったと感じます。

操作性についてはとにかく連写速度とAFが早くなったのには驚かされ、十分すぎる速さで、写真の整理を考えると連写の Hi、Low の設定が欲しいくらいです。
連写時の再生にグループ再生という表示方法になったのが便利ですが、表示の切替えの時間がやや長く感じます。
液晶表示もタッチAFは健在で、画面表示も92万ドットに替わり綺麗に見やすくなっています。
水準器の機能は便利ですが、表示デザインは S110 の方が見やすい気がします。
動画機能もかなり進化してきています。今はあまり使っていませんが、これから活用しようと思っていますのでこの機能も楽しみです。
S120はかなり満足度の高いデジスコ機になったと思います。