09.10.25制作
09.11.14改訂

27. Canon PowerShot S90 のデジスコレポート 
CANON POWER SHOT S90

デジスコの名機S80の後継機としてS90が発売されました。
連写スピードは劣るものの画素数を1000万画素に抑えて高感度とノイズが向上してざらつき感の少ないクリアーな高画質が特徴です。

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CANON POWER SHOT S90

S90のデジスコ化でむずかしい点はレンズ基部のコントローラーリングでしたが、使いやすく、防振対策のシーソーレリーズを加えてなんとか制作出来ました。

接続部にはカメラ側はターボアダプターTA4、アイピース側はスライド機能のあるP2を使用しました。

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アダプターの制作
コントローラーリングを使用するために10mm丸棒を加工し、スペーサーを制作し、基部には4mmのアルミ板を使用、筒にはアルミパイルを2段で取付、マウント側にはTA-W1を加工し、アダプターTA4に接続しました。
カメラとの接続は4箇所のスペーサーを直接接着し固定しています。使用する接着剤の強度はバラツキが大きく、複数でテストした結果、接着強度と外した時の修復のしやすさからセメダインのハイスーパー5が優秀な結果となり使用しました。
レリーズ部はW300やP6000で防振効果で実績のある傘の先を利用したシーソーレリーズを採用、制作し強力正面テープで取付ました。これによりズームレバーが前側から操作出来なくなるため、ズームレバーに後方から操作出来る様にアダプターレバーを制作し、接着で取り付けています。
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最適クリアランス調整と光源ムラの変化   TSN-774 + TE17W(30X)

最適クリアランスはズーム位置と絞り値によって光源ムラの現れ方が大きく変化します。
私の場合、固定式の場合は望遠側をよく使いますので、F5.6で35mmから105mmでほぼ使用可能な位置に調整してみました(クリアランス約3mm)が、35mmでは絞り開放では使用不可ですがF5.6ほど絞ると光源ムラは減少し、望遠側では絞り込むと光源ムラが目立つようになってきますので、望遠側のムラを消す方法として、1〜3mmほどクリアランスを広げて取り付ける必要があります。
結果として固定クリアランスでは最適な状態にならないため、アイピース側アダプターにP2を使用し、最短クリアランスを35mmでケラレが消える約1mmに調整し、望遠側85・105mmでP2のシフト機能を利用してクリアランスをスライド調整方式にすれば最良の状態になります。
使用するアイピースとの組み合わせでも光源ムラの状態が変化しますので、好みにあった最適なクリアランスに調整する必要があります。

固定クリアランスでの光源ムラの発生状況 (広角側は短く、望遠側は長くする必要があります)
TSN-774 TE-17W (30X)での画角変化

S90のレンズは6〜22.5mm(28〜105mm)で30倍のアイピースで有効換算約1000〜3150mmとなり、デジタルズームで15倍(420mm)まで対応出来ますが、広角端ではケラレが発生しますが、1段のズームアップでケラレはほんの僅かとなり、それ以上の領域で使用可能となりますが、85・105mmでは光源ムラがありますので、クリアランスを広げる必要があります。
各ズーム域での解像感は上々で、倍率色収差があまり感じられずに中心部から周辺部までスッキリした画像で、特に望遠側の解像感の低下が少なく良いように感じます。

広角端  6.0(28)mm 840mm 広角  7.5(35)mm 1050mm   10.7(50)mm 1500mm
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望遠 18.2(85)mm 2550mm 望遠端 22.5(105)mm 3150mm デジタル 22.5(420)mm 12600mm
+5mm スライド 拡大 +10mm スライド 拡大 +6mm スライド 拡大
全て絞りF8で撮影しており、35・50mmではアダプターP2のスライドは最短で固定し、85mmでは5mm、105mmでは10mmスライドし、光源ムラは解消しています。
望遠側ではEDレンズで定評のあったP6000と望遠端で距離別に比較してみましたが、ほぼ同レベルの優秀な結果となり、S90はフォーカス精度が良いせいか失敗が少なく感じます。
S90 望遠端 22.5(105)mm 3150mm S90 超遠景 約 500m S90 遠景 約 70m
拡大 元画拡大 元画拡大
P6000 望遠端 24(112)mm 3360mm P6000 超遠景 約 500m P6000 遠景 約 70m
拡大 元画拡大 元画拡大
シャープ設定
カラー設定のカスタムカラーからDISPボタンで詳細を選択し、左側(-)、右側(+)で設定します。エッジの輪郭は補正ソフトの向上の結果かあまり目立たずに従来機より良い感じです。
補正の幅としては、+2段ではややエッジが不自然になりがちで、−2段ではあまく感じますので、標準を基準に好みにより±1段の調整で十分かと思えます。
元画拡大で確認すると変化が良くわかります。
シャープ−2段(最弱)
シャープ+2段(最強) シャープN(標準)
拡大 元画拡大 拡大 元画拡大 拡大
元画拡大
コントラスト設定
カラー設定のカスタムカラーからDISPボタンで詳細を選択し、左側(-)、右側(+)で設定します。画素数を1000万画素に抑える事でダイナミックレンジが広くなった効果を期待していますが、撮影時の天候で仕上がりが左右されますので、その都度好みに合うように調整が必要になります。曇り天時はコントラストが低下しますので、標準からプラス側の補正が必要になり、快晴時には標準からマイナス側の補正が必要になります。
コントラスト変化 (晴天時)
コントラスト−2段(最弱) 拡大 コントラスト−1段 拡大 コントラスト標準(中央) 拡大
コントラスト変化 (曇り天時)
コントラスト+2段(最強) 拡大 コントラスト+1段 拡大 コントラスト標準(中央)
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ISO感度変化
高感度での階調性は極めて優秀に補正されています。通常、400を超えてくるとマゼンタノイズが目立っていますが、本機は3200でもマゼンタノイズは目立たずにソフト的に綺麗に補正されており大変優秀な結果となりました。ただし800を超えるとスフト補正に時間がかかり連写速度は著しく低下しますが、この仕上がりなら十分納得出来ます。
また、拡大画像を見で判るとおり、高感度になるにつれて解像感が失われてきますので、シャープマスクの半径をやや大きくして補正する必要があります。このような補正を加える事で1600あたりまではWEBでの使用には十分使えると思えますが、スッキリとしたクリアーな画像を得るためには200程度に抑えると最良の画像となっています。
ISO80 ISO200 ISO400
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ISO800 拡大 ISO1600 ISO3200
拡大 拡大
拡大
ISO-80 1/40sec F8.0 ISO-1600 1/800sec F8.0
No.091024-774-S90-00429 拡大 No.091024-774-S90-00426 拡大
ISO-80と1600でのセグロカモメ第2回冬羽の実写比較では、1600ではざらつき感はあるものの高感度特有のマゼンタノイズや階調不良によるハイライト部の白飛びやシャドウ部のつぶれがほとんど感じられず、ほぼ同様の階調再現性があるのには驚かされた。
連写スピード
S90の連写スピードは遅いというイメージが有りますが、S80と比較すれば連写スピードは低下していますが、P6000との比較では初速は同等で、内蔵メモリーが一杯になるとかえってS90の方が早い結果となりました。
1/125sec
S90
S80
P6000
10秒連写
9
16
7
30秒連写
29
48
13
まとめ:

操作性:
従来機のS80と比較すると残念なのは、フォーカスポイントが中央のみでW300と同様に移動出来ないのが残念なところですが、フォーカスポイントのスポットを選択、マニュアル拡大機能を含めてフォーカス精度は上々です。
液晶モニターが3型46万画素とクリアーで視認性が向上しています。これにより従来はカメラを外してスコープのピント調整をしてからカメラを取り付けていましたが、モニターを見ながらスコープの調整も可能になりますが、被写体をスコープで観察して撮影をするとのポリシーもあり悩むところですが、選択が広がるのは喜ばしい事です。遠距離の撮影ではマニュアル拡大を利用しスコープのフォーカス調整で微調整すると正確に合わせられました。
コントローラーリングには複数の機能を割り当てて使う事が出来ますが、当面ズーム操作に割り当てています。これはズームレバーで操作した時に光学ズーム域では困った事にモニターにズーム位置が表示されずコントローラーリングに割り当てた場合、28・50・85・105と表示してくれます。
撮影メニューについては、カクタム登録機能を利用すればISO・連写・絞り値(絞り優先時)・ズーム位置・カクタムカラーのコントラスト等の設定をCダイヤルに登録出来、こまめに登録するとかなり便利な機能です。
連写速度は遅く、更にISO800を超えると更に遅くなりますが、画像が良い分と納得するしかないでしょう。
アダプターのセッティングでは、P6000の時のクリアランス可動式はフィールドではミス操作を招き使用しなくなっていましたので、固定式でテストした結果、クリアランス固定式では光源ムラが解消せず、色々とセッティングを決めようと調整しましたが、ズーム全域での妥協は難しく、アダプターP2による可動式にしました。50mm以下は最短で固定し、遠距離などの85・105mmの望遠域でスライド延長する方式としました。

画質:
S90の特徴として画素数を抑えた高感度センサーと補正ソフトの効果により、ノイズが少なく解像感が上がった様なクリアーな画質となっています。また、従来から変わったと感じたのがパソコンに取り込んでアンシャープ処理をした際に従来はエッジが不自然になりやすかったのが本機は目立ちにくくなった事で、センサーというよりDIGIC4の効果かも知れませんが大変ありがたい。
各ズーム域での解像感は全域上々で特に望遠側の解像感が落ちないのは遠距離では嬉しいところで、心配していた倍率色収差は少なく中心部から周辺部まで色収差はあまり感じられずに画面全体でクリアーな画質になっていると思えます。
ISO-800を超える高感度では従来マゼンタノイズで見られなかった画像が粒状性は高感度のため低下しますが、
素晴らしい階調再現性がありWEBなら1600でも使用可能となっています。
オートホワイトバランスは、従来通りのように感じ他社より安定していると思えますが、夕日で枯れ草を背景にした場合、極端に赤黄色の傾向になるのも従来通りで、夕日の設定が欲しい気がする、現時点ではマニュアルセットするか蛍光灯を選ぶしかないようです。

サンプル写真 
ノビタキ 相模原市

TSN-774 + TE-17W(30X) + S90
ISO-80

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No.091012-774-S90-00066
ノビタキ 相模原市

TSN-774 + TE-17W(30X) + S90
ISO-80

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No.091012-774-S90-00130
キセキレイ 町田市



TSN-774 + TE-17W(30X) + S90
ISO-80 1/100sec F5.6 望遠端

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No.091103-774-S90-00766
アオジ 雄  町田市

TSN-774 + TE-17W(30X) + S90
ISO-80 1/80sec F5.6 望遠端

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No.091031-774-S90-00585